DX・AX時代における中小企業のセキュリティ強化と伴走支援について

2026/6/30

2026年6月25日

一般質問① DX・AX時代における中小企業のセキュリティ強化と伴走支援について

   

令和8年6月定例会 会議録より

◆福田吏江子

 現在、中小企業を取り巻く環境は、デジタル技術を活用して業務効率化するDXだけでなく、生成AIをはじめとする人工知能の積極的な導入による構造転換を図る「AX(AIトランスフォーメーション)」の時代へと進んでいます。人口減少や人手不足が深刻化する中で、DXやロボティクス、さらには生成AIの活用は今後の県内産業の競争力を左右する重要な要素であり、企業活動はまさにAIを活用した業務変革の段階へと向かっており、本県においても、今年度当初予算において「DX・ロボティクス活用による生産性向上支援事業」などが計上され、中小企業の生産性向上やAI・自動化への投資を力強く後押しされていると理解しております。

 一方で、本県の基盤産業である製造業は今、極めて厳しい局面に直面している状況があります。中東情勢の不安定化や円安等により、エネルギー価格の高騰のみならず、基礎化学原料であるナフサや、それらに由来する潤滑油、シンナーといった工業用原材料への影響も生じており、本県の誇る高機能素材やものづくりを支える多くの企業がその調達ややり繰りに懸命の努力を続けておられます。

 こうした本県経済の危機に対し、村岡知事が自ら先頭に立たれ、国に対して迅速に要望書を提出されるなど、産業とくらしを守るため精力的に動かれていることは、大変心強く敬意を表するものであります。

 このような世界情勢を受けながら各企業が懸命に対応されている中で、追い打ちをかけるように深刻化しているのが、DX・AX時代における新たなサイバー攻撃や情報漏洩、技術流出のリスクです。

とりわけ本県が世界に誇る瀬戸内海沿岸の化学コンビナートや製鉄、自動車といった製造業の集積地には、半導体用の超高純度材料や高機能素材など、世界シェアの多く、中には9割以上を占めるような世界の産業を支える唯一無二の技術や製品が多数存在しています。 いま、日本の産業界が海外からのランサムウェアやサイバーアタックの標的となっている本質的な理由は、まさにこれら「価値ある日本の高度な技術情報や、世界の縮図とも言えるサプライチェーンそのもの」が狙われているからに他なりません。

 近年、知財や事業継続を脅かすサイバー攻撃においては、大企業そのものではなく、セキュリティの甘いサプライチェーンの「取引先中小企業」を足がかりに侵入し、操業や物流を含むサプライチェーン全体へ影響を及ぼしている事案が生じています。

国においては、こうした「つながりのリスク」に対応するため、企業のセキュリティ対策状況を星の数で格付け・可視化する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」、いわゆる「SCS評価制度」の構築方針を決定し、本年度末からの本格運用に向けて準備が進められています。

 このSCS評価制度が始まれば、本県の強みである化学や製鉄、自動車、さらには物流やITに至るまで、あらゆるサプライチェーンにおいて、一定の「星(評価レベル)」を取得していることが、事実上の取引継続の資格として重要な要件となる可能性があります。

 中小企業にとって、この制度への対応は、「そもそも事業を継続できるか、大手企業と取引をさせてもらえるか」という、企業の継続性・安定性にかかる大きな要素であり、まさに一刻の猶予もない喫緊の課題であると理解したところです。

 先日、県内のあるセキュリティサービスを提供する会社にお話をお聞きしたところ、このSCS評価制度のことを教えていただき、県内では実際すでに危機感が広がってきており、新制度導入に向けた相談が急増していること、特にマツダ系のサプライチェーンにおいては、過去のトヨタ自動車の事案を教訓に、他業界に先駆けて多くの問い合わせや対策への動きが加速しているということをお聞きいたしました。

 例えばですが、SCS評価制度での「セキュリティ★3」は一般的な攻撃を防ぐ標準的な基準とされており、★3を満たすためには、例えば「セキュリティを統括する役員の任命」や「担当部署の設置、責任の明確化」などが求められるとのことですが、現場からは「そもそも何から手をつけたらよいか分からない」 「情報セキュリティの専門用語自体が理解できない」 「自社の対策で『できた』という判断を、一体どう下せばよいのか」 「セキュリティ対策に時間がかかることが大変」 といった非常に深刻でリアルな戸惑いの声が出ているとのことです。

 今年度末からSCS評価制度の運用開始が見込まれている中で、昨今の中東情勢からナフサや潤滑油などの調達・やり繰りに全力を注ぎ時間的にも資金的にも困難な状況に置かれている中小企業に対し、さらにセキュリティへの対応に注力していくことは決して容易ではないのではないでしょうか。

現在、県のDX推進拠点である「Y-BASE」には、DXやAIに対応できる優秀な人材が豊富に揃っており、これまでも大きな成果を上げてこられました。

これからのAX・デジタル時代を生き抜くためには、中小企業への技術的な支援体制を抜本的に強化していくことがこれまで以上に重要になると考えます。

国においても、サイバーセキュリティお助け隊など様々な支援策を講じてはいますが、地域の産業を守るためには、県による、より一層のきめ細やかな伴走支援が不可欠であると考えます。

そこで、お尋ねいたします。

  世界シェアを誇る技術を持つ本県のサプライチェーンを守るため、ナフサや潤滑油確保への対応など厳しい経営環境に直面しながらも、AX/DXを進める県内中小企業に対し、基礎的な「情報セキュリティの意識向上」から、新たなリスクへの対応も含めた「サイバーセキュリティの強化」に対して、県ではどのように取り組まれているでしょうか。また、今年度末の運用開始が目指されている「SCS評価制度」がもたらす影響についてどのように認識され、その対応に取り組まれているでしょうか。ご所見をお伺いいたします。

◎産業労働部長

デジタル化が急速に進展する中、企業におけるDX等の取組は不可欠なものとなっていますが、これと併せて、サイバー攻撃による情報漏洩やシステムの停止等を防ぐためのセキュリティ対策に取り組むことが重要と考えています。

しかしながら、中小企業は、セキュリティ対策における情報や人材、資金が限られているため、県では、セミナーを開催し、セキュリティ対策や人材育成の必要性を啓発するとともに、ファイアウォールなど必要なソフトウェアの導入経費の補助により、企業の取組を支援しているところです。

また、今年度からは、国家資格を持つセキュリティ対策の専門家が企業を訪問し、現状のシステムの分析から、脆弱性の特定、対応策の提案まで伴走支援により、企業の実情に応じたセキュリティ対策の強化を進めていくこととしています。

こうした中、お示しの「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、今年度末の開始に向け、現在、国において、評価対象や評価スキームなど制度の詳細の検討が進められているところであり、その内容や効果等の把握が必要と考えています。

県としては、来月、セキュリティセミナーを開催し、この中で、本制度の概要や今後のスケジュールなど、現在判明している情報について周知することとしており、引き続き、国や関係機関からの情報収集に努めてまいります。

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