活動報告

視察報告

平成29年7月11日 多賀城市立図書館の運営について

多賀城市立図書館を視察しました

【多賀城市概要】

多賀城市は、市の面積が19.69㎢で、人口が約6万2,000人のまちです。奈良時代に国府が設置された歴史が深いまちですが、近年は仙台市のベットタウン化し、またまちの中心部がはっきりしない「へそ」のないまちであることが課題であるとのことでした。

そのため、「へそ」のないまちからJR多賀城駅周辺を中心市街地としたまちの創造へ向けた取り組みがなされています。これまでの多賀城市立図書館は、昭和53年6月1日に開館され、開架式図書館、移動図書館車による市内巡回、市民サービス向上のため分室の設置により市内全域を対象とする図書館として、東北初の「市民のための図書館」として開館当時は先進的な存在でした。しかし、老朽化が進み、貸出サービスが中心だった時代に建設されたため現在では手狭になり、館内でゆっくりと本を読むスペースもなく、また交通のアクセスが悪く場所がわかりにくいという課題がみられ、平成24年度の実績で市民利用率が1割ということでした。また小学生、30~40代の女性、60歳以上と利用者の固定化もみられたため、多くの市民が集い交流でき誇りとなる場所となるような東北随一の文化交流拠点として、また震災復興のシンボルとして、新しい図書館がつくられました。

「多賀城市立図書館の取組を見て】

 多賀城市立図書館は、平成28年3月21日にリニューアルオープンし、「家」をコンセプト(外観も家のような屋根の形をしていました)に誰もが行きたくなる環境や居心地の良いくつろぎの空間、雰囲気づくりを大事にし、階層ごとに役割が設けられ、じっくりと本を読みたい人にも、気軽に利用したい人にも、多くの利用者に親しまれる図書館を目指されています。このようなコンセプトとなった理由は、東日本大震災で被災し、市域の1/3が浸水、人口が6万のまちで1万2,000人を超える市民の方が避難生活を送ったことから、被災で失った居場所づくりやコミュニケーションをとる場所として、もうひとつの家にいるような気持になる図書館という住民からの要望に応えたものです。実際に多くの市民の方が思い思いの場所で過ごし、ソファでくつろぐ姿やカフェでおしゃべりをしている様子、勉強をしている姿など広い空間の中で様々な利用がされている様子が現地視察でも感じられました。エントランスは3階までの吹き抜けになっており、一面ガラス張りの側面から外の太陽の光が入り、とても明るい空間となっています。商業施設(1階スターバックスカフェ、ファミリーマート、蔦屋書店販売スペース、2階蔦屋書店レンタルスペース、3階レストラン)と図書館(1階~3階)がつながっており、商業施設と図書館を分離しつつ柔軟に行き来できるつくりによって相乗効果を狙ったつくりとなっています。また、イベントなどはオープンな場所でしており、参加しやすさや活性化、人の交流が増えるように工夫されています。

平成29年3月14~24日の期間で多賀城市民を対象にした多賀城市のアンケート調査では、市民の総合満足度が79.4%と出ています。また、新しい図書館ができてまちに変化があったかという設問にたいして68.5%の市民の方が変化あったと回答しています。

仙台市にも近い立地であることから、これまで休日は仙台市に遊びに行く人の流れがあり、なかなか市内で何かするということなかったが、新しい図書館となってようやく人が集まれる場所ができたということが多賀城市の方々にとって何よりであるのだということを感じました。

特に、駅中のお店や周辺の商店街の売り上げが伸びており、イベントもさかんにおこなわれ、これまで延べ116回図書館内でイベントが実施されています。参加人数は1回あたり5~10人と少人数であるが身近なところで手軽に様々な生涯学習の機会が提供され、地域との連携を図り、イベント企画を地元の方々に協力していただくなど、できるだけ地元の方々に参画してもらいたい、まちを盛り上げたいというお話を伺いました。

周南市徳山駅前図書館においても地元の方々が参画するイベントの実施が望まれます。多賀城市では、さらに市内にもう少し人を滞留させたい、市内にお金を落としていけるような回遊性を持たせることで復興の一助にしたいという思いがあり、CCCの企画力も活かしながら行政側も知恵を絞りたいという考えを教えていただきました。文化交流拠点として、四季折々の自然を感じながら歩いて史跡などを回れるよう周辺の道路整備を今後進められるとのことです。復興のシンボルとして成功させなければならないという強い想いを感じました。

周南市徳山駅前図書館も中心市街地の活性化のためのシンボルとして、多くの市民の方々が集い、交流し、学び、活動する場所となるよう、開館後の取り組みがとても大事なのだと思いました。

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