活動報告

視察報告

令和元年7月24日 福知山公立大学の視察

「福知山「知の拠点」の構築に向けて―「知の拠点」整備構想の推進」

〇福知山公立大学
・設置者 公立大学法人福知山公立大学(平成28年4月開学)
・在籍数 469名(一回生132名 男288名/女181名)
・学部  地域経営学部(地域経営学科・医療福祉経営学科)定員100名
情報学部(情報学科)※認可申請中       定員100名
・特色  経営学と情報学の文理連携カリキュラムのもと、理論と現場実践を融合させた「地域協働型実践教育」を通じて、北近畿での学びを地域、全国、ひいては世界の課題解決に応用できる人材(グローカリスト)を養成。

〇京都工芸繊維大学福知山キャンパス
・設置者 国立大学法人京都工芸繊維大学
・学部等 工芸科学部3・4回生を対象とする
「地域創生 Tech Program」専門課程
(福知山市をはじめ京都府北部の製造企業等でのインターンシップを中心とする2年間の教育課程)
・概要  公立大隣にキャンパス開設(旧福知山女子高跡地)
平成30年秋より開講、京都府北部一円の企業等でインターンシップやPBL学習等を実践

福知山市は京都市内から電車で1時間15分の場所に位置している。京都府北部全体で過疎化が進んでいるとのことであった。そのため、公立大の隣に京都工芸繊維大学のサテライトキャンパスをつくり、「知の拠点」としての集積を図ったとのことである。

福知山公立大学について
【大学の基本理念】
市民の大学、地域のための大学、世界とともに歩む大学
【目指すべき大学像】
1地域と世界をつなぐ、グローカリズム研究実践の拠点大学
2地域社会を支え、地域社会を支えられる大学
3持続可能な社会の創出に貢献する大学
【目指すべき人材像】
地域に根ざし、世界を視野に活躍する“グローカリスト(Glocalist)”
→質の高い専門教育と地域協働型実践教育を通じて、地域の課題解決能力を養成する。
→北近畿を学び、全国、そして世界的な課題解決に応用できる人材を育てます。

☆従前の私大とは、キャンパス・在学生のみ引き継いだが、教員・職員・基本理念はすべて一新し、まったく新しい学校としたとのことであった。

☆学生は9割以上市外から来ている。何百人規模の若い学生が新しい住民として住むことによる活気が得られる。学生たちがやりたいことをチャレンジできる場づくり、空き店舗を使ってのイベントや地域のこども食堂などに取り組む。このまま学生が残ってくれたらよいが、まずは4年間常に一定規模で住んでもらって、それぞれの地域に戻ったとしても福知山の応援団になってもらえたらと考えているとのことであった。

〇福知山市「知の拠点」整備構想の概要(平成30年2月策定)
≪推進内容≫
1福知山公立大学の新学部(情報学部)開設
2産学官連携による「知の拠点」推進体制(コンソーシアム)の構築
3「知の拠点」整備構想の実現に向けて必要となるキャンパス整備
福知山公立大学と京都工芸繊維大学福知山キャンパスを北近畿地域の地域創生を牽引する「知の拠点」と位置付け、両大学の文理連携を推進し、地域を担う人材の育成、若者の定着、産業振興、地域活性化に繋げる。

☆新しく情報学部を開設することを考え文科省に認可申請中とのことであった。これからの社会を見据え、AIやIoT、データサイエンスなどの先端情報技術を地域のあらゆる分野に応用することで、新たな価値の創造や雇用に繋げること、地域の発展に寄与することを目指しているとのことであった。しかし、京都工芸繊維大学の中にも情報工学課程があるため、学校として望む学生が受験するかは難しいところであると考える。どのように住み分けをするのか、特色を出さないと中途半端になるとの出ないかと懸念を抱く。キャンパス内はこれからも整備が進められ、800人規模の学生が在籍できるように計画しているとのことであった。新学部棟の整備だけでなく、ICT環境整備や空調工事、バリアフリー化、大学内道路の新設、市道の改良なども計画されている。

〇福知山公立大学財政試算(経常経費)
令和4年からのランニングコストについては市から支出はしないとしているが、もし赤字が出たら出さざるを得ないということであった。学生が足らない赤字は市がまかなう。また、情報学部を創るにあたって、一時的にお金がかかるその赤字補填も市がするとのことであった。
収入は、授業料、入学金、検定料、運営費交付金(地方交付税分、収支不足分、先行投資分)、その他補助金(国・府・市等)、その他の収入である。支出は、人件費、教育研究費、管理経費である。
公立大学は学費が安い分、私立と比べて教育コストがかからないかと言えばそれは違う、税金でまかなうのだという説明であった。交付税でまかなうことを前提とせず令和3年まで市が赤字補填をするとのことであった。

私大から公立化での経済効果などのエビデンスはまだないが、公立校として地域のために何をするか、私学の時からの行動理念が少し変わるとのことであった。しかし教育の独立性は担保しつつパートナーとして福知山市・近隣市町の課題に大学としても取り組んでいきたいという思いを感じた。
福知山公立大学は北近畿地域(10市4町)の過疎化、人口減少の加速化から京都府と兵庫県の境界を超えた人口減少の取組でもあるとのことで、これまでエリア一体となった教育機関がなかったこともその背景にあった。福知山市だけでなく、周辺自治体も一緒になって取り組みが進められたらさらに良いのではないかと考える。しかしながら、県・府をまたぐ広いエリアでの取組であるが近隣市町からの財政支援、京都府からの運営支援は一切なく、公立化するから皆さんよろしくとは言えない状況であること、まずは広域ではなく単市で運営しているとのことであった。
また、これまで力を入れていたスポーツの分野では、大学の学費が安くなる分お金をかけることが難しく、予算配分が変わったとのことであった。
公立化したといえども生き残りが大変な時代となっている。現実的には交付税措置は楽観視できない。高等教育の無償化で学費面の相対的優位性は薄れていく。だからこそ、次の手次の手を考えていかないといけないとのことであった。いろんな教育課題がある中で、いつまでも大学に重点投資していくわけにはいかないことから、自活できるように理系の学部を設置する。大学を抱えて、どういうまちづくり、どういう人材育成をしたいのかというビジョンをしっかりと持ち、単なる大学を運営するということではなく、福知山にとって最大の成長戦略にする覚悟で取り組むということであった。
全国の国公私立大学で改革が進められていることから、福知山公立大学はそのひとつの事例として今後も推移を見守りたい。

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