☆地方議会の問題に関する議論
1.選挙の問題
・選挙の競争性の低さ、高い無投票当選率(都道府県議会、町村議会)→1/4くらいが無投票で議員が決まっている。無投票選挙になる理由:強い候補者だから勝てないケース。人材・なり手不足のケース。
・住民の関心・参画意識・投票率の低さ→誰のせいか。政治のせいだけでなく、みんなのせいという指摘。議員・議会が何をしているかわからない。首長と議員の区別がわからない。生活がうまくいっているから政治に関心がない。ありがたみがわからない。先進国の中で、日本人の政治への関心は低いが不満は高いという傾向あり。受動的で自分から関わろうとは思わないが不満はある。
・地方議会の意義や魅力のアピール不足。
・選挙制度(小選挙区制51対49だと49票は死票になる)、会派、区割りと「一票の格差」「地域考慮」の問題→自分の票が無駄にならないようにより強い方に投票する傾向あり。小選挙区制になると投票率が下がることは世界的に言われている。
・特に都市部だと政治にお世話になっている感覚が薄い。働くエリアと寝るエリアが別になっている場合が多い。財政的に生活・産業・地域の未来において政治に頼るところが大きいことから、都市部より非都市部の方が投票率が高くなる。非都市部だと知り合いや周りの人が行くから投票に行くことが当たり前で、義務感もある。地域のネットワーク重視。都市部の議員は顔が見えない。投票に行こうが行かなくても関係ない。選挙は接戦しているときに盛り上がる。
- 議会の問題
・地方議会議員の属性の偏り(男女比、年代比、職業等)
・二元代表制・議会審議の実質化、政策立案力、リソース問題
- なり手不足の問題
・議員を目指しやすい環境・条件の整備
・市民への浸透、選挙支援、待遇改善、人材育成、主権者教育→若いときから子供のときから政治に関すること話をしない環境。
- 地方議会における政党・選挙制度のあり方
・都道府県レベルでは党派性、市町村レベルではわかりにくい→会派名や名前だけでは議会に疎い人にはわからない。
2.議会の問題
- 都道府県議会・政令市議会
・二元代表制の強化、政党政治化(首長に権力を集中させた方がスピード感ある。その場合、議会の役目はどうなるか。チェックが緩い。考え方が共通しているなら二元である必要がない。逆にガチンコ勝負すぎると進まない。どちらかがやろうとしていることをもう片方が潰す。e.g.衆参のねじれ)
・住民との距離を埋める方策:住民から成る「第二議会」の創設?(→首長の下ではなく、議会の下に議会を置く。議決するより意見やアイディア出す場)
・意見・アイディア聴取システム→サイズや地域事情に合った議会・選挙運動のあり方の模索。
- 小規模自治体議会:議員のなり手不足の深刻化→他の選択肢?→自治体は、議会を置くか、町村総会をおくか選べる。法律で決まっている。
・町村総会(地方自治法第94条):議決権のあり方等に課題(高知県大川村:町村総会を認めるかどうか)かなり例外的。実質的に機能したことはまだない。
・タウンミーティング:民主的正統性(住民の一部が来るだけ。正統性あるのか。議会は選挙で選ばれた議員が決めるため正統性あり。来た人がその街の行末を決める。本当にそれで良いのか。選挙も同じ?)・議事機関としての機能に課題
・総務省 平成29年度「町村議会のあり方に関する研究会」
人口段階別による無投票当選の状況:平成27年統一地方選挙結果
1,000未満 11/17団体(64.71%)
議員定数7.07人 平均年齢62.23歳 女性議員割合2.86% 議員報酬152,510円 年間会期日数23.23日
1,000以上10,000未満 59/216団体(27.31%)
議員定数10.43人 平均年齢63.59歳 女性議員割合7.56% 議員報酬194,229円 年間会期日数32.63日
10,000以上30,000未満 24/140団体(17.14%)
議員定数14.54人 平均年齢62.66歳 女性議員割合10.14% 議員報酬246,898円 年間会期日数52.23日
30,000以上100,000未満 9/170団体(5.29%)
議員定数19.64人 平均年齢60.57歳 女性議員割合13.17% 議員報酬355,851円 年間会期日数84.14日
人口規模が小さい自治体ほど無投票の割合が高い。住民関心が低い。誰かがやってくれるだろうという意識。議員報酬の額が低く、それだけでは生活ができない。若い人が目指しにくい。何か他に商売をしていないとやっていけない。
※議員定数は市区議会についてはH27.12.31現在、町村議会についてはH28.7.1現在
平均年齢及び女性議員割合は市区議会についてはH28.8集計、町村議会についてはH28.7.1現在
町村議会のあり方
○総務省 平成29年度「町村議会のあり方に関する研究会」
- 長村議会議員のなり手不足の深刻化
・背景:高齢化・人口減少
・議会:開催時期・日時、議決事件の多さ、兼職・請負禁止
・待遇:議員報酬少ない、議員年金改善の難しさ、定数減、負担感高い
・住民:関心薄い、多様性の低さ、参加のハードル高い
- 町村議会
・地方自治法第94条、小規模自治体の検討
・課題:議決のあり方、参加者の確保、運営(高知県大川村:町村総会に高い壁、400人の村で有権者175人の出席が必要)、家で遠隔でやるには技術的改革が必要(I T環境の整備)
- タウンミーティング等
・諸外国の多様な制度(定足数を考慮しない、審議と採決の分離、住民投票の活用等)
・課題:民主的正統性、議事機関としての機能
- 町村議会の2つのあり方(案)
☆集中専門型:主たる職務として議員活動に専業的に活動(同じ人がずっと続けることにより権力の集中を生む)。生活給を保障する水準。少数の者からなる議員構成(極限まで人数を減らす)。請負禁止を維持。公務員の立候補退職後の復職制度。議会運営は本会議審議(委員会制なし)の平日昼間中心。議会参画員の活用(議決権はないが議論に参加。将来の候補育成)。
☆多数参画型:従たる職務として議員活動に非専業的に活動。権限を狭める(議決事件の制限。議員の仕事を減らす。執行部に権力集中)。生活給保障なし。多数の者からなる議員構成(候補者確保の問題)。選出方法の見直し(新たな選挙区制が必要か)。請負禁止を緩和。通年会規制による審議日程の分散。夜間・休日中心に議会運営。多数の有権者が議員として参画。
- 「2つの議会」像の提案
・仕組みの詳細の検討、現行制度や世論との擦り合わせ。
・議論のきっかけ、地方議会・議員の意義・機能・役割の見直し
・地方政治の根本的問題、自治体自体の限界
- 抜本的・創造的見直しに向けて
・地方議会・地方議員の「一律性」の限界→独自展開
・住民参加のあり方:例)クラウド・プラットフォームの活用
・I T等技術革新の活用、効率化(遠隔で会議に参加できるように。議場に集まらなくてもwebでつなげてできる)
3.議員のなり手の問題
- 意識改革・啓発活動
・「市民の政治参加=当たり前のこと」
・男女・家族・地域共同体など、様々なところで意識改革が必要
- 地域活動との連携
・町内会・地域協議会・市民団体・N P O等との連携
・「政治塾」等を通じた人材の育成
- バックアップ体制の整備
・活動しやすい議会(時間・場所の自由度向上、IT技術の利用)
・環境整備(職場、子育て、介護等との両立)
議会のあり方、地方自治のあり方について、今一度見直していく必要があると考える。現在は、地方議会や地方議員のあり方が一律になっている。国や県からの交付金・補助金という流れがあることもその要因の一つとなっていると考える。このたびの事例では、町村議会において議員の位置付けを専門集中型とするか多数参画型とするかという比較がなされたが、地方議会全体にも考えられることであると考える。現在の県市町村議員の位置付けは、とても中途半端なように思う。少人数で構成し、そのかわり身分をきちんと確立させ、確かな専門性を持って議論が進められ、地方自治の一翼としての権限を持たせるのか。また、すそ野を広げ、参加しやすいかたちの議会とし、さまざまな住民が議論に参加でき、そのかわり権限は強くなく、議員の仕事としての負担も軽減させる形とするのか。地方議会の性格も議員数によって変わる。日本において地方議会のあり方はこれまでこうだったから、これからも同じスタイルでしていくということではなく、今の人口減少社会、少子高齢社会を踏まえた社会の姿から、どのような地方議会のあり方がベストかということは常に考えていかなければならないと思う。日本の地方議会とは違う手法で成り立っている国も様々ある。
また、IT技術を活用した議会運営についても議論を進めていきたい。任期中に様々な理由で議場に来られない場合であっても議決に参加できる、議論に加わることができるということは、地方議会へ多様な人材の参加が期待できる。技術的にはすでに可能になっていることから、各議会の判断次第であると思う。
この記事へのコメントはありません。